水漏れしたマンションは売れる?修理済みでも伝えたいことと売却の進め方

会話は読者の疑問を整理するための架空のやり取りです。
大事なのは「原因・修理・その後」を説明できること。
上階から水が来た部屋も、自室の配管から階下へ漏らした部屋も、売却前に整理することがあります。書類や事情が全部分かっていなくても相談できます。不動産会社が管理会社などへ確認し、売り方と説明の内容を整えていきます。
まず、水漏れが「今どの状態か」で分ける
売出しの準備より、被害を広げない対応を先に。管理会社・管理組合の緊急窓口へ連絡し、原因調査につなぎます。
原因の調べ方へ ↓原因箇所の修理と、床・天井などの復旧を分けて確認。いつ、何を直し、その後どうかを整理します。
買主への伝え方へ ↓水が止まっただけで「完治」とは言えません。追加調査や管理組合の工事予定を確認し、売却条件を考えます。
売却の段取りへ ↓現在進行中なら、管理会社の緊急連絡先へ。自室の水の使用が原因と思われるときは使用を控え、止水方法も相談します。写真や連絡の記録は、調査・修理・保険の確認に役立ちます。売却相談は並行して構いませんが、内装だけ先に直して原因を見えなくしないことが大切です。
当社のお客様のマンションでは、階下からの連絡をきっかけに、床下の排水管の亀裂が分かったことがありました。室内には目立った異常がなくても、床下では水漏れが起きていたのです。
漏れている場所が見えないから、原因もないとは限りません。調査する業者・管理会社と状況を確認することが、売却の説明にもつながります。
当社公式ブログVol.67で紹介した事例の要旨です。すべての漏水が同じ原因・負担になるという意味ではありません。
濡れた場所と、水漏れの原因箇所は違うことがある
天井から水が出たからといって、すぐ「真上の人が払う」とは決まりません。自分の住戸だけに関わる専有部分か、建物全体などに関わる共用部分かも、原因箇所と実際の管理規約などで確認します。
| 自室の設備・配管 | 自室から階下へ漏らしていても、室内に水が見えるとは限りません。原因の修理と、階下への賠償の有無を別に確認します。 |
|---|---|
| 上階など他の住戸 | 自分が被害を受けた側でも、原因箇所の修理が済んだかは別途確認が必要。自室の天井を張り替えただけでは分かりません。 |
| 共用配管・屋上・外壁 | 管理組合側で調査・工事の検討が必要になる場合があります。修理済みか、応急処置か、工事待ちかを確認します。 |
| 原因を特定できない | 分かっている範囲と未確認の範囲を区別。調査の経過、再発の有無、今後の対応を共有します。 |
「床下の管だから自分のもの」とも、一律には言えません。配管の通り方や管理できる構造によって扱いが異なることがあります。管理区分だけで損害賠償の責任まで自動的に決まるわけではなく、原因や故意・過失なども関係します。費用や責任で争いがある場合は、保険会社や法律の専門家への確認が必要です。
管理規約のひな型が、そのまま自分のマンションに適用されるわけではありません。国土交通省のQ&Aも、まず実際の規約の確認を案内しています。
保険は「管を直す費用」と「濡れた被害」を分けて聞く

傷んだ管の交換、接続部の補修など。水濡れ補償では、給排水設備そのものの修理費は対象外とする商品があります。
濡れた天井・壁・床、家財の復旧など。事故の状況、加入する補償、免責金額などにより、対象になるかが変わります。
経年劣化が関係していても、突発的な漏水による水濡れ被害が補償される商品はあります。一方、交換を勧められた管をそのままにした再発や、長時間かけて染みた被害などは、対象外になる場合も。「古い管だから全部だめ」「水漏れなら全部出る」のどちらでもありません。
自分の建物・家財の保険、管理組合の保険、他人への賠償を扱う特約は役割が異なります。管理会社や契約先に事故の経過を伝え、原因調査・配管修理・内装復旧・他の住戸への賠償のうち、どれが対象か分けて確認します。補償されるかは保険会社の判断です。
一例:損保ジャパンの老朽化した給排水設備の水濡れに関するFAQ、ソニー損保の水ぬれ補償の説明。商品・契約時期・特約によって条件が違います。
修理済みでも、「今は漏れていません」だけで終わらせない
過去の水漏れを知っているなら、まず仲介会社に伝えてください。仲介会社が、売主の記憶と管理会社・修理業者などの資料を照らし、物件状況報告書(告知書)や契約条件への記載を整理します。
いつ、どこに水が出たか
↓
原因は何で、何を直したか
↓
その後の状態と、まだ分からないこと
工事請求書だけでは原因の特定まで分からないこともあります。報告書・写真・管理会社との連絡記録を合わせて確認します。
書類がなくても、記憶を無理に断定へ変える必要はありません。「上階からの漏水と聞き、天井は補修した。原因部分の工事内容は資料で未確認」など、分かることを伝えたうえで確認を進めます。単に「修理済み」とまとめると、買主には原因まで直ったと受け取られるおそれがあります。
裁判例でも、「修理済み」と説明した中身が問題に
東京地裁2023年2月17日の判決では、地下室のあるマンションの漏水について、仲介会社が修繕済みと伝える一方、漏水・修理の記録を確認できていないことを買主に説明しなかった点が問題とされました。
2017年の契約をめぐる旧民法下の個別事例です。今のすべての取引に同じ責任や金額が当てはまるものではありません。ただ、「調べても分からなかったこと」も含めて正確に伝える重要性が分かります。
売るなら、修理を全部済ませてから相談しなくていい
原因や資料が整理できていなくても、売却相談はできます。最初に「漏水したことがある」「修理したと聞いているが詳しくは分からない」と教えていただければ、不動産会社が必要な確認先や順番を整理します。
発生時期、被害を受けた側か漏らした側か、誰が対応したか。手元にある資料から始めます。
売主の協力のもと、管理会社などへ調査・修理の記録や今後の予定を確認します。
修理して引き渡すのか、未解決の点をどう扱うのか。説明と契約条件をそろえます。
原因を直し、その後の状態も説明できるなら、漏水歴を伝えたうえで通常の売却を検討できます。原因不明や工事待ちでも直ちに売却不可能とは限りませんが、買主が引き受ける不確実さは大きくなります。調査・修理の条件、時期、費用分担などを整理し、価格や販売方法も含めて相談します。
売値が何割下がる、と一律には言えません。原因、修理内容、再発の状況、管理組合の対応、ほかの条件との組み合わせで買主の判断は変わります。買取も選択肢になり得ますが、未解決の問題が消えるわけではなく、条件や価格への反映はあります。

調査資料とこの記事の範囲
確認日:2026年10月23日。分譲マンションの所有者が売却を考える場面を対象にしています。賃貸の入居者・貸主の負担は契約関係が異なります。
- 国土交通省:専有部分と共用部分の仕分け。個別のマンションの規約確認を優先。
- マンションみらい価値研究所:漏水事故の実態(2023年公表)。同社管理の東京都内の分譲マンションで、2021年10月〜2022年9月の保険事故データを調査。1,167管理組合中218組合・299件。全国や春日井の発生率、各戸の被害確率を示す数字ではありません。
- 保険会社のFAQと裁判例の出典は、該当箇所に掲載しています。保険金の支払い・法的責任は個別の契約や事情で異なります。
アイキャッチはイメージイラストです。水漏れの原因や責任を写真・イラストだけで判断することはできません。


