更地にしたのに、地中からガラが。土地売却の撤去費用と売主の責任

家も壊して、きれいな更地にしたのに。売ったあとで「土の中からコンクリートが出た」って言われることもあるの?

あります。見た目が更地でも、土の中まで全部確認できているとは限らないんです。ただ、何か出たら全部売主負担、とも決まりません。何が、どこから出たのかと、契約の内容を確認して対応します。
会話は読者の疑問を整理するための架空のやり取りです。
想定外の費用を、どう扱うかまで考える。
相続した土地や長年住んだ実家でも、地中のことは売主が知らない場合があります。この記事は、土地を売る前の不安と、解体中・引渡し後に発見されたときの対応を、売主の立場から整理します。
家を壊しても、地中には残ることがある
地中埋設物とは、その名のとおり土の中に埋まっているものです。売却で問題になりやすいのは、古いコンクリートや建物の基礎、浄化槽、配管など。自然の石や、現在も必要な設備まで、何でも一括りに「ごみ」と考えることはできません。
解体で生じた破片など。「ガラ」と呼ばれるもの。量や位置、建築への影響を確認します。
前の建物に関わる構造物。上の家がなくても、地下部分が残っている場合があります。
使っていない管とは限りません。所有者や接続先を確かめずに切ると、別の被害につながります。
位置・大きさは説明用の模式図です。地中埋設物にはほかにも井戸や杭などがあります。すべてが同じ扱いになるわけではありません。
家の解体は、土地全体を深く掘り返して、地中に何もないことを保証する工事とは限りません。工事の範囲外や、さらに下に残っていたものが、買主の新築工事で分かることもあります。「解体済み」「整地済み」という言葉だけで、調査や撤去の範囲まで決まるわけではないのです。
見つかった時点で、次の対応が変わる
「昔、井戸があった」「前の建物に地下室があった」など、不動産会社に分かる範囲を伝えます。調査の要否と売却条件を考える段階です。
工事業者と仲介会社が現物・追加費用・工程を確認。必要なら、引渡しの時期や条件も買主と調整します。
契約書と通知内容を確認し、現場の記録や見積りを共有。責任の有無と、必要な工事の範囲を分けて話し合います。
売主が地中のことを全部調べてから相談する必要はありません。不動産会社が、過去の使われ方や建物の資料を聞き取り、工事業者などと確認を進めます。親から引き継いだ土地で詳しく分からない場合も、そのまま伝えて構いません。
「知らなかった」と「責任を負わない」は同じではない
土地の売買では、引き渡した状態が契約で約束した内容と合っているかが問題になります。これが契約不適合責任の考え方です。埋設物のために建築できない、想定を超える撤去が必要になる、といった場合には、売主に対応が求められる可能性があります。知らなかったことだけで、すべての責任を免れるとは限りません。
一方で、古い管が一本出た、少量の破片があった、というだけで、買主の請求をそのまま全額払うとも限りません。買主が何のために土地を買い、何を約束し、実際にどんな支障が出たかを見ます。売主が約束した撤去工事と、引渡し後の契約不適合責任も、分けて確認が必要です。
現況渡しという一言で、埋設物の費用負担まで当然に決まるものではありません。撤去すると約束した範囲、残すものの説明、責任の範囲・通知期限を、契約書全体で確認します。
免責の特約があっても、知っていた事実を告げなかった場合には、その責任を免れないことがあります。「昔そう聞いた」「あるかもしれない」という情報も、断定せず仲介会社へ伝え、確認したことと未確認のことを整理します。
主に個人の所有者が売主となる土地売買を想定しています。宅建業者が自ら売主となる場合などは、責任を制限する特約に法的な制約があります。通知期間は一律に「3か月」と覚えず、自分の契約を確認してください。
実際の裁判でも、「出たもの」だけでは結論が決まらない
建物や工作物などを撤去する特約がある取引で、残った塀の基礎の撤去費用など約29万円が認められました。一方、買主が求めた庭の土の入替えなどまで、すべて売主の負担とはされませんでした。
境界付近に配水管や塀基礎の越境が見つかった事例では、契約の内容や、住宅の建築に具体的な支障が認められないことなどから、売主の契約不適合責任は認められませんでした。
当社の相談事例ではなく、公表された裁判例の要旨です。1つ目は改正前民法下の契約です。判決は個別事情によるもので、「塀の基礎なら払う」「管なら払わなくていい」という分類ではありません。
撤去費用は、解体代の「込み・別」を確かめる
地中から何が出るかによって、追加の掘削、取り出し、運搬、処分、土の埋戻しが必要になります。費用は量だけでなく、深さ、重機が入れるか、周囲の設備を傷めずに作業できるかでも変わります。見つかっていない段階で、追加費用を一律の金額にするのは難しいところです。
| 最初の見積り | 今ある家の基礎、塀、浄化槽など、どこまで撤去に含まれるか。地中から予想外のものが出たときは別途か。 |
|---|---|
| 追加工事の根拠 | 何が、どこに、どれだけあるか。写真、寸法、掘る範囲、処分する量と単価を確認します。 |
| 追加費用の承認 | 発見した時に誰へ連絡し、誰が見積りを確認して追加工事を承認するか。先に決めておきます。 |
| 記録・完了確認 | 作業前後の写真、撤去・処分の記録など。売却の説明にも使うので、工事業者と残す資料を相談します。 |
ここで区別したいのは、売主と解体業者の工事契約と、売主と買主の売買契約です。解体の見積りで別料金でも、買主に引き渡すために売主側で対応が必要な場合はあります。反対に、買主が依頼した工事業者の請求を、売主がすべて負うとも限りません。両方の契約を仲介会社と確認します。
全日本不動産協会の2025年の事例解説では、実際に出たものと工事費の裏付けが争われています。必要な撤去費用と、買主が別に行う地盤改良・造成・庭づくりなどの費用を、一緒にしないことが大切です。
金額だけで判断せず、対象物、作業範囲、数量、写真、処分の記録などを工事業者へ確認します。
売る前に、土地を全部掘っておくべき?
すべての土地を一律に掘り返すという話ではありません。まず不動産会社が、昔の建物、解体の時期、井戸や浄化槽、過去の利用などを確認し、必要に応じて専門業者へ調査範囲と費用を相談します。建物が残っていて調べにくい場所もあります。
試しに一部を掘る「試掘」をしても、その範囲外まで何もないと断定はできません。また、地盤の強さを調べる調査と、土地全体の埋設物を探す調査は目的が異なります。何を調べ、どこまで分かったかを、買主への説明にも引き継ぎます。
今も使う配管や隣地に関わる設備は、処分してよい物かを先に確認します。油臭や不審な廃棄物がある場合などは、通常のガラ撤去だけで判断せず、専門業者や関係窓口への確認が必要です。撤去費を抑えるために埋め直せばよい、というものではありません。
見つかった連絡が来たら、仲介会社と現場を確認する
- 何が見つかったかを共有する
買主や工事業者から連絡が来たら、売却を担当した仲介会社へ。場所・写真・発見日・作業状況を確認してもらいます。安全上の対応が必要なら、それを優先します。
- 撤去する前の状態と、契約を確認する
可能な範囲で現物や写真を残し、立会いの機会を調整。何の工事が必要か、費用の内訳、契約の通知期限や撤去条件を確認します。緊急対応を除き、確認前に撤去・処分が進むと、あとで量や原因を確かめにくくなります。
- 工事・費用・日程の合意を整える
責任の有無と工事内容を整理し、追加工事や費用の分担、引渡し・建築工程への影響を調整します。法的な見解が分かれる場合は、弁護士などと連携して進めます。
売主が、現場で見つかったものの正体や法律上の責任を一人で判断する必要はありません。逆に、内容が分からないまま「全部払います」「絶対に払いません」と決めると、調整しにくくなります。まず仲介会社が事実と契約をそろえ、必要な対応を整理する段階です。
売る前なら、解体を発注する前から相談できる
土地を売るときは、売却価格だけでなく、解体や撤去にかかる費用を引いた手取りも大切です。家を先に壊すか、契約後に解体するか、古家付きで引き渡すか。地中の不確実さも含め、買主の需要と条件を見ながら考えます。

うちは親の代からの家だし、土の中のことまで分からんよ。それでも相談していいんだね。

はい。まずは、覚えていることを聞かせてください。こちらから必要なことを伺い、資料や工事の状況を確認します。売主として何を説明し、どんな条件で引き渡すかを一緒に整理していきます。
調査資料とこの記事の範囲
確認日:2026年10月23日。土地を売る個人の所有者向けに、工事と売買の確認点を整理しています。埋設物の有無・撤去範囲・契約条件によって対応は異なります。個別の法的な責任や費用を保証するものではありません。
- 全日本不動産協会:契約不適合責任(地中埋設物)(月刊不動産2024年10月号)。契約内容と建築への支障、土地の利用履歴・説明の重要性を確認。
- 不動産流通推進センター:配水管の埋設と塀基礎の越境(2025年11月掲載)。契約不適合責任と通知期間・特約の取扱いを確認。
- 裁判例・撤去費用の確認に用いた資料は該当箇所に掲載しています。裁判例の金額は一般的な撤去費用の相場ではありません。
図とアイキャッチは説明用のイメージで、実際の調査結果ではありません。


