親子で読む、春日井の創作昔話「鎹祭(かすがいさい)」
親子で読む、春日井の創作昔話
鎹祭
四つの村と、一本の大きな木。
ばらばらになった村人たちを、
もう一度つないだものは……。
場面 01四つの村と、大きなご神木

むかし、むかし。春日井というまちができるよりも、ずっと、ずっと大昔のお話です。
この地方には、四つの村がありました。村の境には、たいそう立派な大木がそびえ立っていました。
その木には神様が宿るといわれ、四つの村の守り神として、長いあいだ大切にされていたのでした。
場面 02いつしか、村人たちは……

ところが、時がたつにつれて、村人たちは豊かな暮らしに慣れてしまいました。
人や自然への感謝を忘れ、お互いに助け合うこともなくなり、自分のことばかり考えるようになったのです。
「あのご神木は、わしらの村だけのものだ!」
とうとう、ご神木を自分たちだけのものにしようと、村同士で争うようになってしまいました。
場面 03ご神木に、雷が落ちた

村人たちの身勝手な振る舞いは、ひどくなるばかり。ついに、神様がお怒りになりました。
あたり一面が真っ暗になり、空は雷雲でおおわれました。
ゴロゴロッ……ピカッ!
ドーーーン!
大きな雷が、ご神木に直撃したのです。今まで村人たちを守ってくれたご神木は、四つに砕けてしまいました。
場面 04大切なものを失って

ご神木を失ってからというもの、村人たちの暮らしは、日に日に悪くなっていきました。
病気や不作などの災いが増え、みんな悲しい思いでいっぱい。不安な毎日を送るようになりました。
かつては助け合い、仲良く暮らしていたのに。
「どうして、こんなことになってしまったんだろう……」
場面 05もう一度、みんなで話そう

村人たちの心に、少しずつ後悔や反省の気持ちが芽生えてきました。
自分の利益ばかり考えていたこと。人や自然への感謝を忘れていたこと。お互いを思いやる気持ちをなくしていたこと。
村人たちは集まり、もう一度、幸せに暮らすにはどうすればよいか、真剣に話し合いました。
そして、みんなで協力してやり直すことを決めたのです。
場面 06砕けた木を、つなぎ直そう

「これから、みんなで仲良く暮らしていく。その証しに、ご神木をよみがえらせよう」
村人たちは、砕けたご神木を寄せ集めました。
そして、木と木をつなぐ鎹(かすがい)を使って、つなぎ合わせることにしたのです。
場面 07どっこいせ! どっこいせ!

木を寄せ集める人。鎹を打ち込む人。応援する人。お祈りする人。
村人たちは、みんなの幸せを願い、自分にできることを一生懸命に行いました。
どっこいせ!
どっこいせ!
ご神木をつなぐ掛け声が、あたりに響きます。みんなの思いが、ひとつになりました。
場面 08すると、どうでしょう

そのときです。あたり一面が再び真っ暗になり、空が雷雲でおおわれました。
ゴロゴロッ……ピカッ! ドーーーン!
大きな雷が、もう一度、ご神木に落ちたのです。
すると、どうでしょう。四つに砕けていた木が、元どおりの大きなご神木の姿に戻ったではありませんか。
場面 09つながりを、大切に

村人たちは、それはそれは喜びました。そして、同じ過ちを繰り返さないことを誓いました。
人とのつながりを大切にし、お互いに支え合って暮らしていくうちに、病気や不作などの災いは、しだいになくなっていきました。
みんなで助け合い、幸せに暮らせるようになったのです。
場面 10人の縁をつなぐ「鎹祭」

それから村人たちは、ご神木をいっそう大切にするようになりました。感謝の気持ちを込めて、年に一度、ご神木のもとに集まり、お祭りをするようになったのです。
木をつなぎ直したのが鎹であったことから、そのお祭りは、いつしか「鎹祭(かすがいさい)」と呼ばれるようになりました。
人の縁や幸せをつなぐ、福のあるお祭り。村人たちは、その後もずっと助け合いながら、幸せに暮らしていったのだそうです。
めでたし、めでたし。

