相談27|貸している倉庫、借主に売る?(春日井市・法人)

貸している倉庫を、借りている会社が買いたいと言ってきた。買主を探す手間はかからないし、物件のこともよく知っている相手です。ただ、こちらは今、売りに出しているわけではありません。
春日井市の法人からのご相談でした。倉庫の所在地は春日井市外。約5年前から貸していて、借主から購入の申し出があったのです。
売ればまとまったお金が入る。その代わり、この倉庫から入ってくる家賃はなくなる。まずは、そこから考える話でした。
倉庫を売ると、家賃収入はなくなる
貸している不動産には、売れる値段と、持っている間に入ってくる家賃があります。
空いていて使い道に困っている建物なら、買いたい人が現れたことで話が進むこともある。でも、今回は借主がいて、家賃が入っている倉庫です。購入の申し出があったからといって、すぐに売る理由にはなりませんでした。
家賃が入るといっても、その全額が残るわけではありません。持っている間の修繕や維持の費用もあります。今後も貸していくなら、そうした負担も見ておく。一方、売るなら、いくらで売れて、そのお金をどうするか。
売却価格だけを見ると大きな金額でも、その後の収入がなくなることまで考えると、判断は変わります。
この法人は、資金繰りに困っているわけではありませんでした。将来的に売ることは考えられるけれど、今すぐ売らなくてもいい。借主からの申し出を受けて、条件を確かめていくことになりました。
借主には、この倉庫を買いたい理由があった
倉庫を探している別の会社と、すでにそこで事業をしている会社。同じ建物を見ていても、必要とする度合いは違います。
今回の借主にとっては、事業を行っているエリアも、倉庫そのものも価値のあるものでした。購入したいという希望は強かったのです。
一般の買主にとっては、いくつかある候補の一つかもしれない。でも、今使っている借主には、この場所だから買いたいという事情がある。周辺の相場はもちろん調べますが、それだけで話を終わらせる必要もありません。
ただ、買いたい気持ちが強いから、どんな値段でも買うという話ではない。借主にも購入の条件があり、貸主にも家賃収入を手放すなら納得できる条件がある。その間で話を進めていきました。
今すぐ売る必要はなかった
貸主側には、この倉庫をどうしても持ち続けたいという強い理由もありませんでした。所在地は主な営業エリアから離れていて、条件が合えば手放すことは考えられます。
売ってもいい。でも、急がない。
そのため、最初の申し出ですぐに決めることはありませんでした。話がまとまらなければ、持ち続けることもできる。その余地を残しながらの交渉です。
結果として、話し合いは約2年にわたりました。最終的に借主から相場を上回る価格の提示があり、売却がまとまりました。
2年待てば高く売れる、ということではありません。今回は借主の購入意欲が強く、貸主にも待てる事情があった。その両方があって、時間をかけて条件を詰めることができました。
もし早く現金にする必要があったり、借主の購入希望が変わったりすれば、同じ進め方にはなりません。売却の話は、値段と一緒に、どのくらい待てるかも関わってきます。
売却代金で、別の収益物件を買う
この法人は、倉庫を売った資金で、別の収益物件を取得しました。
倉庫の家賃収入はなくなりましたが、そのお金を次の収入につながる不動産に移したわけです。今回の売却は、持っている不動産を減らして終わる話ではなく、資産の入れ替えになりました。
もちろん、別の物件を買えば何でもいいわけではありません。一般に収益物件を買うなら、家賃の額だけでなく、空室や修繕、管理にかかる費用も見ます。売却価格がよくても、次の物件に無理な金額を払ってしまえば、そこで負担が増えてしまう。
売る方の条件と、買う方の条件。両方を見ながら進める必要があります。
今回は、借主が望んでいた倉庫を購入し、貸主は売却代金を別の収益物件に充てることができました。約2年かけた話は、そこで落ち着きました。
売った後の収入まで考える
借主から買いたいと言われることは、貸している不動産を見直すきっかけになります。ただ、相手が買いたい時期と、こちらが売りたい時期は、同じとは限りません。
この倉庫を持ち続けるなら、どれくらい収入が残るのか。売るなら、どんな条件で、そのお金をどう使うのか。まだ使い道が決まっていなければ、そこも含めて考える。
今回の貸主は、急いで売る必要がなく、持ち続けることもできました。そのうえで、売却条件が合い、次の収益物件を取得するところまで進んだ。借主からの購入の申し出を、そういう形で受け止めた相談でした。
※実際の相談をもとに、一般的な検討事項を交えて再編集しています。
春日井シティ不動産株式会社
代表 山本直嗣
