大安・仏滅、気にしますか?暮らしの節目と、縁起の話
おカン占いはそんなに信じてないのに、家を買う日が大安って聞くと、ちょっとうれしいのよね。
「信じる」と「気にする」は、同じじゃないのかもしれませんね。日取りだけでなく、方位や家相を大切にする方もいます。そのあたり、少し調べてみました。
家を選ぶとき、価格、場所、間取り、建物の状態はもちろん大切です。その一方で、「引っ越す方角が気になる」「昔から相談している占い師に聞いてみたい」「親が大事にしているので、お日柄も見ておこう」という話もあります。
まったく気にしない人もいれば、節目だけ縁起を担ぐ人も、暮らしの判断に深く取り入れる人もいる。六曜、方位、家相、個人の占いは、それぞれ別のものですが、今回はそれらを通じて、人はなぜ、暮らしの節目に縁起や占いを大切にしたくなるのかを考えてみます。
初詣も、ひな祭りも。暮らしの中にある「願う」気持ち
お正月に初詣へ行き、今年も家族が元気でいられるようにと手を合わせる。ひな人形を飾り、子どもの健やかな成長を願う。由来を詳しく説明できなくても、季節が来れば家族で続けている行事があります。
浅草神社の解説では、初詣は年が明けて初めて神社や寺院へ参拝すること。神社だけの行事と限らないところにも、暮らしの中での受け止め方の広さが見えます。参考:浅草神社「神社の豆知識」
神道には「八百万(やおよろず)の神々」という考え方があります。八百万は、ちょうど800万柱という数え方ではなく、数えきれないほど多くの神々を表す言葉です。神社本庁も、自然の中に見出される神や神話の神々を挙げ、地域の氏神さまを暮らしに身近な存在として紹介しています。出典:神社本庁「神社について」
ただし、日本の年中行事を全部、一つの信仰から説明できるわけではありません。例えばひな祭りは、中国の節句の習慣と、日本の禊祓いや人形を流す風習などが重なって育った行事です。出典:国立国会図書館「雛市と雛祭り」
そこには、災いを避けたいという願いだけでなく、無事に過ごせたことへの感謝や、家族の成長を喜ぶ気持ちもあるでしょう。強い信仰として大切にしている人もいれば、家族の習慣や季節の楽しみとして続けている人もいる。行事に参加しない人にも、それぞれの暮らし方があります。
何かを願い、感謝し、節目をつける。家を建てるときや新しい家へ移るときの縁起も、そんな暮らしの延長に置いて考えると、特別に大げさな話ではなくなるのではないでしょうか。
「気にする人もいる」。でも、その中身は一つではない
日本トレンドリサーチと斎奉閣・家族葬会館 和ごころが、2023年7月に全国の男女1,000人へ行ったネット調査では、六曜を「とても・やや気にする」が計47.7%。結婚式や入籍などの祝い事では、気にする人が59.3%でした。
自由回答には、昔からの習慣を大切にする声も、都合がつかなければ合わせる程度の声も、普段は意識しないという声もあります。「気にする」という回答を、そのまま「必ず六曜を確認して日程を決める」と読むことはできません。
出典:日本トレンドリサーチ・斎奉閣・家族葬会館 和ごころの共同調査(2023年7月9〜13日、全国男女1,000人)。調査発表/調査記事。不動産売買に限定した調査ではありません。
引越しでも、アート引越センターの2024年の調査では、六曜を考慮に入れた人が60.5%いました。ただし、対象は春に引越しを予定する関東・関西の20〜40代400人です。考慮したことと、仕事や費用より優先したことは別です。
出典:アート引越センター「2024年 春の引越調査レポート」(2024年2月上旬調査)。
気にする人がいるのも、気にしない人がいるのも確かです。さらに同じ人でも、普段の買い物と結婚や住み替えでは、受け止め方が違うかもしれません。「今の人はみんな気にしない」「年配の人はみんな気にする」とも、簡単には分けられない話です。
信じていなくても、ちょっと気になるのはなぜ?
ここからは、調査や研究を手掛かりに、家を選ぶ場面で考えられる気持ちを整理してみます。誰にでも同じ理由が当てはまるわけではありません。
例えば、占いの結果を事実だと信じているわけではないけれど、亡くなった親が大切にしていた習慣だから続けたい。大安に特別な力があるとは思わなくても、新しい暮らしの門出として気分がいい。
そんな場合まで、信じるか、信じないかの二択にしてしまうと、その人が大事にしているものを見落としてしまいそうです。
調べて決めても、これからの暮らしは全部は分からない
家を買うときは、できる限り資料を確認し、現地を見て、資金計画も立てます。それでも「この家で家族がどう暮らしていくか」まで、先に全部確かめることはできません。家族の成長、仕事の変化、近所との関係。住んでから始まることが、たくさんあります。
そうした場面で、「良い日に始めたい」「これでよし、と気持ちを決めたい」と思うことはあるでしょう。縁起が未来を保証してくれるというより、自分がその選択を引き受け、新しい生活へ踏み出すための区切りとして意味を持つ場合もある、と考えられます。
慣れた儀式と心の落ち着きの関係は、研究の対象にもなっています。Langらの2020年の研究では、モーリシャスのヒンドゥー教徒の女性を対象に、人前で話す課題の前に、いつもの寺院で儀式を行う群と、休息する群を比較。儀式を行った群で、不安がより低下したと報告しています。
これは特定の文化・条件での研究です。日本の六曜や方位の効果を調べたものではなく、「大安に買えば良いことが起きる」という証明でもありません。それでも、出来事の結果を変える力と、本人の気持ちを支える働きは、分けて考えられるという手掛かりにはなります。
参考:Langほか(2020)儀式行動と不安の軽減に関する研究。以下の家選びへの考察は、この研究が直接検証した結論ではありません。
信頼する人のひと言で、決心がつくこともある
方位や時期を、長く付き合っている占い師に相談したい人もいます。その人にとっては、占いの理屈だけでなく、「これまで話を聞いてくれた人に、今回も聞いてみたい」という関係の意味もあるのかもしれません。
例えば、家族の事情を話し、迷っていることを言葉にし、最後に背中を押してもらう。そこには、未来を言い当ててほしい気持ちと、自分の決断に納得したい気持ちの両方がある場合も考えられます。
もちろん、占いを頼りにしない人なら、家族と話したり、自分で資料を読み比べたりして、同じように決心を固めるでしょう。何を頼りにすると納得できるかは、人によって違うということです。
おカン自分はそこまで信じてなくても、親が気にしているなら、できる範囲で合わせようかな、というのもあるね。
日付や方角そのものだけじゃなくて、誰の気持ちを大事にしたいのか、という話もありますね。同じ「大安を選ぶ」でも、理由はいろいろです。
家族が大切にしてきた習慣を受け継ぐ、みんなで新生活を祝う、気持ちよく区切りをつける。そのような意味があるなら、本人には大事なことです。一方、家族と同じ考えではなく、日取りも方位も気にしないという選択も、その人のものです。
六曜の豆知識① 広まったのは、意外と最近?
大安や仏滅は、古代から今の形で続いてきた日本の決まり、と思うかもしれません。国立国会図書館の解説によると、六曜は14世紀ごろに中国から伝わり、広く行われるようになったのは幕末以降。名称や順序も、時代とともに変わってきました。
日本天文学会の「天文学辞典」も、ルーツは定かでないことや、現在の六曜になるまでに変遷があったことを説明しています。ずっと昔から動かなかった絶対の基準、というわけではないのですね。
出典:国立国会図書館「日本の暦・六曜」/日本天文学会「天文学辞典・六曜」
豆知識② 「仏滅」でも、仏教の決まりではない
「仏」という字があるので、仏教の教えで決められた日だと思ってしまいそうです。しかし、天台宗の法話「友引と葬儀」では、六曜は仏教とは関係がないと説明しています。
同じ法話では、友引も、もとは勝負がつかないという意味の「共引」が「友引」になり、友を引いていくという俗信につながったと紹介されています。今の字面から受けるイメージと、もとの意味が違うのも面白いところです。
出典:天台宗「友引と葬儀」。語源の細部には諸説があります。
豆知識③ 六日で一周、だけではない
六曜は、先勝→友引→先負→仏滅→大安→赤口と巡ります。ただし、七日ごとに同じ曜日が来るのとは違い、旧暦の月初めで割り当てが変わります。
例えば、旧暦の1月と7月の1日は先勝、2月と8月の1日は友引、と決まっています。カレンダーを眺めていて「並びが飛んだ?」と思ったら、旧暦の月が変わったところかもしれません。出典:国立国会図書館「日本の暦・六曜」
大安・仏滅・先勝など、一般にいわれる意味
日取りを考える際に耳にする六曜の意味を、簡単に並べました。吉凶に科学的な根拠があるわけではなく、解釈にも諸説があります。慣習の言葉としてご覧ください。
| 六曜 | 一般にいわれること |
|---|---|
| 先勝 せんしょう | 午前は吉、午後は凶とされます。 |
| 友引 ともびき | 朝夕は吉、正午は凶などとされます。祝い事では好まれる日です。 |
| 先負 せんぷ | 午前は凶、午後は吉とされます。 |
| 仏滅 ぶつめつ | 万事に凶とされ、祝い事などでは避けられることがあります。 |
| 大安 たいあん・だいあん | 一日を通じて吉とされ、祝い事などで好まれます。 |
| 赤口 しゃっこう | 凶日とされる一方、正午は吉とする解釈があります。 |
不動産の現場でも、人それぞれです
当社の実務では、まず仕事や売主・買主の都合を確認します。決済は通常、銀行・法務局が開いている平日になり、銀行や司法書士の段取りも合わせます。皆さん忙しいので、お日柄ありきで日程を組むわけではありません。
候補が二つに絞られ、どちらでも都合がつく。片方が仏滅、もう片方が大安なら、「では、大安にしましょうか」。そのくらいのこともあります。特に気にしない方も、方位や日取りを大切にする方もいらっしゃるので、それぞれのお考えを伺います。
家相や方位、占いが気になる場合も、物件に何を求めるかを考える一つの材料にはなるでしょう。ただ、耐震性、雨漏り、災害リスク、資金計画など、資料や調査で確かめる内容は別にあります。占いで良いと言われたからその確認を省くことも、気になると言われたから建物に欠陥があると決めることもできません。
そして、縁起を大切にすることと、その考えを相手にも当然のように求めることは別です。気にしない人に無理に合わせてもらうのも、気にしている人を笑うのも、気持ちよくない話です。
気になる方は、遠慮なく。気にしない方は、そのままで。
おカン山本さん自身は、そういう縁起って気にする方なの?
私自身は、どちらかというと気にする方です。でも、それは私の考え。お客様が気にするかどうかは、それぞれでいいと思っています。
六曜がどうしても気になる、方位や引越しの時期に希望がある。そういう方は、遠慮なくお話しください。売主・買主の都合や必要な手続きも確認しながら、調整していきます。
一方、気にしない方は、気にしないままで大丈夫です。わざわざカレンダーを見て、気になることを増やす必要はありません。
大切なのは、その人が気持ちよく、新しい暮らしを始められること。縁起を大切にする理由も、取り入れる程度も、人それぞれ。そのお考えを伺いながら、家の売買を進めていきたいと思います。


