相談2|リースバックで生活は楽になる?(春日井市・60代男性)

住宅ローンの返済が苦しい。でも、一緒に暮らす母親には心配をかけたくない。
今回の相談者は、80代のお母様と二人暮らしの男性でした。仕事を失い、住宅ローンを3か月滞納していました。
返済を何とかしなければならない。一方で、高齢のお母様に心配をかけたくないという思いもありました。
そこに、家を売ってローンを返し、そのまま住み続けられるリースバックの話がありました。引っ越さずに済むなら、お母様の暮らしも変えずに済む。その条件が、男性には大きかったのです。
大阪のリースバック業者と契約を結んだあと、不安になって、このままで大丈夫かと、知人を通じて私のところに話が来たのは、売買契約締結の2日後でした。
ローンはなくなる。その後は?
契約では、自宅を800万円で売ることになっていました。残っている住宅ローン約400万円と諸経費を差し引くと、手元に残るのは約360万円。その後は、家賃を払って同じ家に住みます。
そこだけ聞けば、ローンがなくなり、まとまったお金も残ります。
ところが、毎月5万円だった住宅ローンの返済が、月8万円の家賃に変わる契約でした。
月5万円の返済が難しくなっていたところへ、今度は毎月8万円を払う。収入の見通しが立たないままなら、家賃や生活費を手元のお金から出していくことになります。
ローンを返せたからといって、この先の暮らしが成り立つようになったわけではありません。お金が減ってきたときには、家はもう自分のものではない。そこで売却して資金をつくることもできません。
お母様と暮らしていく住まいを守るための契約が、数年先の住まいを失うきっかけになりかねない条件でした。
買い取る会社にも、その先の計算がある
家を買ってくれる。そのまま住まわせてくれる。
返済に困っているときには、助け舟のように感じると思います。でも、その会社は、売る人の生活を支えるために家を買うわけではありません。不動産を買い、貸し、利益を得るための取引です。
それ自体が悪いという話ではありません。売る側も、自分の暮らしに合う条件かどうかを考えて契約する必要がある、ということです。
家賃収入や、将来その家を売るときの利益、維持費やリスクを考えて、買取価格と賃貸の条件を組みます。一般の買い手に売る場合より価格が低くなることがあるのは、この事業の仕組みとも関係しています。
今回の家は、約40坪の旗竿地に建つ、築30年の木造住宅。当時の立地や土地相場から、通常の売却なら1,500万円前後も見込める物件でした。査定の見込みであり、売却を約束できる金額ではありません。それでも、800万円の契約をそのまま進める前に、比べておく必要のある差でした。
家賃についても、高いか安いかだけでは済みません。相場に合った家賃でも、毎月払えるかどうかは別の話です。
そして、将来の売却で利益を出すことを考えている事業者にとって、いつ家を売れるかは重要です。住む人は長く暮らしたい。その会社は、いずれ売却して利益を確定したい。両者の都合が、ずっと一致するとは限りません。
その違いが出てくるのが、家を売ったあとに結ぶ賃貸借契約です。
「住み続けられる」に期限があった
今回の契約は、2年間の定期借家でした。
定期借家は、普通借家と違って、期間が来たら自動的に更新される契約ではありません。期間満了で終了し、引き続き住むには、貸主と借主が合意して再契約する必要があります。
「その後も住めますよ」と説明されても、再契約できる条件がどうなっているかは別に確認が必要です。相手が再契約に応じなければ、住み続けることはできません。
普通借家では、貸主が更新を断るには正当事由が必要です。同じ「家を売ったあとも住む」という話でも、住まいの安定性は違ってきます。
引っ越しを避けたくて契約したのに、2年後にまた住まいを探さなければならないかもしれない。今回の条件では、そこも見落とせませんでした。
そもそも、今この契約が必要だったのか
話を戻すと、男性のローン残高は約400万円。月々の返済は5万円でした。
まず、銀行に返済について相談したのか。仕事や収入を立て直す間、どんな対応ができるのか。すぐに家を手放す前に、確認しておくことがありました。
銀行への相談で必ず解決するわけではありませんし、仕事もすぐに見つかるとは限りません。それでも、このリースバックしか道がない、という状況ではなかったのです。
仮に家を売るとしても、通常の方法で売れば、ローンを返したあとに残せる資金が変わります。そのお金と次の住まいの費用を比べながら、生活を立て直すことも考えられます。
返済に追われていると、今の問題が片づく条件が大きく見えます。「住み続けられる」と聞けば、その家賃をいつまで払えるか、住める期間がいつまでなのかという話は、後ろに回りがちです。
お母様に話すと、別の道が見えてきた
男性は、お母様にも相談しました。すると、家を売って引っ越すことも、仕方がないという話になりました。
母親には心配をかけたくない。その思いから、一人で何とかしようとしていました。でも、二人で話してみると、この家に住み続けることだけが前提ではなくなったのです。
家を売ったあとの資金と、次の住まいを考える。リースバックで月8万円を払い続ける以外にも、二人の暮らしを立て直す方法が見えてきました。
契約の条件を見直すだけでなく、ご家族の考えも確かめたうえで、解約する方向で話がまとまりました。
50万円の負担で、引き返せた
このときは、まだ手付解除ができる段階でした。
売主側からの解除なので、受け取った手付金50万円を返し、さらに同額の50万円を加えて返す、手付倍返しです。男性に新たに50万円の負担が生じましたが、知人の協力もあり、資金を工面して解除できました。
契約から2日だったから必ず解約できる、ということではありません。今回は早く相談が届き、手付解除ができる段階で対応できたという経過です。
その後、自宅は通常の方法で売り出し、当時の相場に沿った価格で成約しました。
50万円は軽い負担ではありません。それでも、家を安く手放し、月8万円を払う契約を続ける前に、別の進め方へ戻ることができました。ここからの暮らしを考えるための資金を、売却で残す道ができたのです。
リースバックの、引っ越さずに済むという利点は大きいと思います。資金に余裕があり、家を子どもに残す必要もなく、住み慣れた家で暮らすことを優先したい方なら、検討する余地はあります。ただし、その場合も、希望する期間を本当に住める契約なのかは欠かせない確認です。
今回の男性には、ローン返済の問題に加えて、お母様に心配をかけたくないという思いがありました。お母様と話してみると、売って引っ越すことも受け入れられました。
その話を、契約の前にできていたら。50万円を負担する前に、別の進め方を考えられたかもしれません。
家を買ってくれることと、暮らしが楽になることは、同じではありません。
今月の返済をどうするか。その先、何年も暮らしていけるか。家族はどう考えているか。銀行への相談や通常の売却も含めて、一度並べて考えてみる。
リースバックを勧められている方も、契約したあとで気になってきた方も、まずはご相談ください。今回は、契約から早い段階で話が届いたことで、引き返す方法を確認できました。
春日井シティ不動産株式会社
代表取締役 山本直嗣
※実際の相談事例をもとに再編集しています。金額・契約条件は相談当時のものです。
契約の説明の参考:国土交通省のリースバック資料・定期建物賃貸借 Q&A
