相談11|市街化調整区域の家、売れる?(春日井市・60代男性)

広い庭も、駐車スペースもある家。一人で暮らすには広く、掃除や管理が負担になっていました。
家を売って、駅に近いマンションへ移りたい。春日井市の60代の男性から、売却査定のご相談をいただきました。
広い家を売って、駅近のマンションへ
25年前に購入した中古の戸建てです。買ったときは築10年ほど。相談をいただいた時点では、築35年ほどになっていました。
長く暮らしてきた家ですが、今は一人暮らし。家が広ければ、掃除する場所も多い。庭があれば、その手入れもあります。交通の便も良くないため、次は駅の近くで暮らしたいという希望でした。
建物は古いものの、リフォームすればまだ住める状態でした。広い敷地を使いたい人や、庭のある暮らしを好む人なら、関心を持つかもしれません。
ただ、この家があるのは市街化調整区域です。建物の状態や敷地の広さだけでは、売却の見通しを立てられません。役所で、建てられたときの許可から調べることにしました。
住宅だと思っていた家は、店舗の許可だった
調べると、この建物は、もともと店舗として許可を受けていたことが分かりました。
前の所有者が住宅へ改装していましたが、用途変更の許可は取られていませんでした。その状態で売却され、ご相談者は長年、家として暮らしていたのです。
外から見ても、今の使い方を見ても住宅です。けれど、許可の上では同じ話になりません。
市街化調整区域は、市街化を抑える区域です。建築や用途変更には制限があり、今そこに家があるからといって、次も住宅を建てられるとは限りません。
今回の調査では、この建物を壊した後、住宅として建て替える見通しが厳しいことが分かりました。
調整区域の家が、どれも建て替えられないわけではありません。いつ、何の用途で、どんな許可を受けて建ったか。同じような場所に並ぶ建物でも、その経緯で扱いが違ってきます。
この家では、長く住宅として使われてきたことと、住宅として建て替えられることが、つながっていなかったのです。
建て替えが難しいと、売値にも響く
古い家を買う人は、今の建物に住めるかだけでなく、その先のことも考えます。
直してしばらく住んだ後、家が使えなくなったらどうするか。土地を買って、いずれ自分の家を建てたいという人もいるでしょう。住宅として建て替えられないとなれば、そうした買い方は難しくなります。
今の建物を使う前提でも、住宅としての利用条件や、融資を受けられるかを確認しなければなりません。庭が広い、駐車場が十分にあるという良さだけでは埋められない条件です。
そのため、普通に住宅を建て替えられる土地と、同じような価格では考えにくくなりました。
ご相談者にとっては、家が売れさえすればよい話ではありません。そのお金を、次のマンションへの住み替えに使いたい。
売却できる可能性と、住み替えに必要なお金が残るか。その両方を見ていくと、今回の家の売却だけで希望する住み替え費用を確保する見通しは立ちませんでした。
今回は売らず、この家で暮らすことに
建物は、まだ住める状態でした。ご相談者は、当面は売却せず、そのまま暮らすことになりました。
広い家の管理が負担という事情が、なくなったわけではありません。駅近のマンションへ移りたいという希望も、実現していません。
ただ、今の家を売れば、その代金で次の家へ移れる。そう見込んで進めることが難しいと分かり、住み替えの計画はいったん止まりました。
25年間暮らした家を、売ろうとして調べたところで、建築当時の許可の問題が出てきた。今回、売値を考えるうえで大きく関わったのは、家の古さだけでなく、その家がどんな条件で建てられたかでした。
春日井シティ不動産株式会社 代表 山本直嗣
※実際の相談事例に、市街化調整区域の建築・売却についての一般的な説明を加えて再編集しています。建物の築年数などは相談当時の記録です。
