相談15|親が買った山林の別荘地、手放せる?

親が40年前、将来は別荘地になると聞いて買った土地がある。今は荒れた山林になっていて、自分も使う予定がないので、手放したい。
そんなご相談でした。土地は岐阜県内にあり、広さは約60坪。別荘地になるという話で買ったものの、今あるのは山の中の土地です。相談者の方は、現地へ一度も行ったことがありませんでした。
家のように片づける荷物があるわけでもなく、固定資産税の納税通知も来ていない。それでも、使わない土地をこの先も持っているのは気になるものです。売れるなら売りたい。値段がつかなくても、誰かに引き取ってもらえれば。まずは、その土地がどこにあり、何に使えそうかを調べるところからでした。
地図はある。でも、土地にたどり着けない
持ってきていただいた地図や購入時の書類を見ながら、場所を調べました。登記はありますが、現地のどの範囲がその土地なのか、資料だけでははっきりしません。
道路にも面していないとみられ、入っていく道も確認できませんでした。航空写真では、木の茂った山の中です。
60坪というと、住宅の敷地くらいの広さを思い浮かべるかもしれません。でも、車で行ける宅地の60坪と、山の中の60坪では、使い道がまったく違います。広さと登記があるだけでは、家を建てたり、資材を置いたりできる土地とは言えません。
周辺で参考にできる取引も見当たらず、この土地を必要とする買い手の見通しは立ちませんでした。
タダなら引き取ってもらえる?
売れないなら、値段を下げる。それでも難しければ、タダでもいい。手放したい側としては、そこまで考えます。
ただ、受け取る人には、その後も土地を持ち続ける事情ができます。所有権を移す手続きも必要ですし、場所や境界が分からなければ、何を引き受けるのかも確かめられません。使う予定がない人にとっては、購入代金がゼロでも、欲しい土地になるとは限らないんですね。
今回も、売値をいくらにするかという段階まで進めませんでした。買う人が何に使うのか。その見込みが立たなかったからです。
近くの土地の所有者なら必要としているかもしれない、という探し方はあります。ただ、それは隣の方が買ってくれるという話ではありません。今回、そのような引き取り先が見つかったわけでもありませんでした。
国に引き取ってもらえないか
売る相手がいないなら、国に引き取ってもらえないか。ここで話に出てくるのが、相続土地国庫帰属制度です。
相続などで取得した土地について、条件を満たせば、国に所有権を移せる制度です。自分で買った土地を、そのまま不要だから返せる仕組みではありません。親が買った土地なら、今の名義と、どう取得したかから確認します。
土地そのものにも条件があります。今回のように現地の範囲や境界がはっきりしない状態では、書類を出せば引き取ってもらえるとは言えません。どこからどこまでが自分の土地かを明らかにすることから、話が始まります。
なお、山林であることや、道路に面していないことだけで、すべて対象外になるわけではありません。実際の状況をもとに、法務局への相談や審査で確認することになります。
申請には審査手数料がかかり、承認された場合にも負担金が必要です。境界や現地を確認するために、別の費用がかかることもあります。土地を手放すために、どこまでお金を使うか。利用できる見込みと一緒に考えたいところです。
この相談では、制度を使って手放せるという見通しも示せませんでした。申請して不承認になったという話ではなく、相談時点で道筋が立たなかったということです。
この山林だけ、相続をやめられる?
将来の相続で、この土地だけを引き継がないようにできないか。これも気になるところです。
相続放棄は、不要な土地だけを選んで放棄する手続きではありません。預貯金やほかの不動産なども含め、その方の財産や債務を引き継がない手続きです。実家や預金は受け取り、山林だけ放棄する、という使い方はできません。
家族の誰かが引き受ける形で相続をまとめても、土地そのものがなくなるわけではありません。その人が、同じ土地を持つことになります。
相続が始まっている場合は、放棄の期限や、すでにした手続きも関わります。山林一つの話として決めず、ほかの財産も含めて、弁護士や司法書士に確認する話になります。
今回は、手放す方法が見つからなかった
この土地は、売却にも、ほかの処分にも至りませんでした。相談のあとも、保有が続くことになりました。
納税通知が来ていないことと、土地を持っていないことは別です。今は使わなくても、購入時の書類や地番は、家族が分かる形で残しておく方が、後で一から探さずに済みます。
山林でも、道路があり、使いたい人がいる土地なら話は違います。今回の土地では、その使い道と引き取り先が見つかりませんでした。
親が買ったときから40年。手放したいと思って書類を持って来られても、売り出すところまで進めない土地がある。今回の相談は、そういう結果でした。
制度の確認:法務省・相続土地国庫帰属制度の概要 / 裁判所・相続の放棄の申述
