相談6|兄が反対する共有の土地、売れる?(春日井市・50代女性)

兄は売りたくない。自分と妹は売りたい。
春日井市の50代女性、Aさんからの相談は、兄弟3人で相続した土地のことでした。名義はそれぞれ3分の1。Aさんと妹さんは売却を希望していましたが、お兄さんは反対していました。
同じ親から受け継いだ土地でも、その後の暮らしや考え方は、兄弟で同じとは限りません。Aさんは、土地全体を売るのが難しいなら、自分の持分だけでも現金にできないかと考えていました。
今回は、売却には進めませんでした。お兄さんの意向は変わらず、持分だけを売る条件も、Aさんが納得できるものではなかったためです。
土地全体を売るには、全員の合意が必要
3人のうち2人が賛成している。持分を足せば3分の2ある。それなら進められそうに感じるかもしれません。
ただ、土地全体を通常の売買で第三者に売るには、共有者全員の合意が必要です。Aさんと妹さんだけで、お兄さんの持分まで買主へ渡すことはできません。
ここで整理したのは、土地全体の売却と、自分の持分の売却を分けることでした。
土地全体を買えば、買主はその土地の所有者になります。持分だけを買えば、ほかの共有者と一緒に所有することになります。同じ土地に関わる取引でも、買えるものが違います。
自分の持分だけなら売れる?
持分が3分の1あるから、敷地のここからここまでを自分だけで売れる、という意味ではありません。特定の場所を区切って単独で所有しているわけではないからです。
買った人も、土地の好きな場所に自由に家を建てられるわけではありません。使い方や処分をめぐって、ほかの共有者との調整が残ります。
そのため、一般の住宅用地を探している買い手に、共有持分だけを買ってもらうのは難しくなります。持分を扱う専門業者が買う場合も、共有関係を整理する費用や時間、見通しが価格に織り込まれます。
土地全体の価格を3で割った金額が、そのままAさんの持分の売値になるわけではありません。持分の価値は、割合だけでなく、買ったあとに何ができるかにも左右されます。
今回も、Aさんが納得できる金額で、自分の持分だけを現金化する見通しは立ちませんでした。
兄に持分を買い取ってもらう方法も
一般に、共有者の一人が土地を持ち続けたい場合には、その方がほかの人の持分を買い取る方法も考えられます。全体を第三者に売らずに、売りたい人が持分を手放す形です。
ただし、残したいという気持ちと、買い取るお金を用意できるかは別です。価格の合意も要ります。今回は、その方法での解決には至りませんでした。
Aさんとは、全体の売却に向けた話し合いも検討しましたが、お兄さんの反対は解けませんでした。最終的には、持分を安い条件で急いで手放すこともせず、いったん現状を維持することになりました。
これで土地の問題がなくなったわけではありません。Aさんが希望していた現金化は、実現していません。
売却を見送った土地、管理や相続はどうなる?
売却を見送れば、名義も共有のままです。税金や管理をどう負担するか、土地をどう使うかといった話は、その後も残ります。
さらに共有者に相続が起きると、その持分を次の世代が受け継ぎ、関係する人が増えることがあります。兄弟の間でまとまらなかった話を、今度はいとこ同士で話すことになるかもしれません。
だからといって、今すぐ売るように迫ればまとまる、というものでもありません。売りたい理由と、残したい理由をそれぞれ確認しながら、価格や負担を具体的に置いて話すことになります。
話し合いで共有を解消できない場合には、弁護士に相談し、共有物分割など法的な整理を検討する余地もあります。費用や期間、土地の条件によって進め方は変わるので、「反対があるなら永遠に何もできない」とも、「裁判にすれば簡単に売れる」とも言えません。今回、その手続きまで進んだ事例ではありません。
Aさんの相談は、いったん土地を残すところで終わっています。売る人を探すより前に、誰が何を所有していて、誰が何を望んでいるかを整理する必要がありました。共有の土地では、査定額が分かることと、売却に進めることの間に、こうした話し合いが挟まります。
春日井シティ不動産株式会社 代表取締役 山本直嗣
※実際の相談事例をもとに、共有の仕組みについての説明を加えて再編集しています。法的手続きは個別事情に応じて弁護士等への確認が必要です。イラストは相談者のイメージです。
制度の確認資料:民法(共有・共有物分割)
