相談7|相続した実家、売る?貸す?(東京都・50代男性)

実家の手入れに帰る。それが年に数回でも、家を持っている限り続くとなると、負担の感じ方が変わってきます。
東京で暮らす50代男性、Bさんは、5年前にお父様が亡くなったあと、春日井市の実家を相続しました。ご自身や親族が住む予定はなく、家は空き家のまま。年に数回、手入れのために帰省していましたが、だんだん負担が大きくなっていました。
売れば管理から離れられる。でも、思い出のある実家を手放すことには迷いがある。貸せば家を残せるけれど、入居者への対応が増えるのではないか。その両方が気になっていました。
実家は当時、築40年の4LDK、土地は約40坪。土地の需要が見込める立地で、売却査定は1,600万円でした。一方、壁紙の張り替えやハウスクリーニングなどの手入れをすれば、月7万円ほどで貸せる見込みもありました。
どちらも当時の見込みで、実際に売れた価格や受け取った家賃ではありません。Bさんとは、売る・貸す・今のまま持つ場合を比べ、売却する方針になりました。
売却査定と毎月の家賃は、そのまま比べられる数字ではありません。売るならいくら残るのか。貸すならいくら先に使い、その後どんな仕事が続くのか。相続した実家の相談では、そこまで具体的にしていきます。
売る・貸す前に、家の状態を確認
築40年だから壊すしかない。古いけれど、少し直せば貸せる。どちらも、年数だけでは決められません。
雨漏りの跡はないか。床に傷みはないか。給湯器や水回りは使えるか。屋根や外壁に近いうちの修繕が必要か。室内をきれいにする費用と、家として使うために必要な修繕費は分けて考えます。状態によっては、建築士などによる調査も必要になります。
建物の状態と一緒に、名義や共有者の有無、土地の境界、道路との関係も確認します。家の中に残っている家具や荷物を、誰がどこまで片付けられるかも、実家では大きな話です。
分かる範囲の登記資料、固定資産税の通知書、間取り図や写真があれば、相談を具体的に進めやすくなります。資料が全部揃ってからでないと話せない、ということではありません。
売るなら、建物を残す?解体する?
売買の査定で建物に大きな価格が付かなくても、住まいとして使えないとは限りません。Bさんの実家も、売る見込みだけでなく、貸す見込みがありました。
同じような家を売るなら、建物を残した中古住宅として買う人がいるか、土地として売る方がよいかを調べます。古い家だからと先に解体すると、建物を使いたい人へ売る道はなくなり、解体費も先に必要になります。
建物を残した場合の価格、更地にした場合の価格、解体の見積もり。ここは別々の数字を並べます。更地の方が高く売れても、解体費を引いたら手取りが少なくなることもあります。
売り先の探し方にも違いがあります。不動産会社が一般の買い手を探す仲介と、不動産会社自身が買う買取です。仲介は買い手を探す時間が必要です。買取は条件がまとまれば引渡し時期などを決めやすい一方、買う側の修繕費や再販売の利益も価格に織り込まれます。
急いで現金化したいのか、時間をかけても手取りを確保したいのか。金額だけでなく、内見への対応や、荷物を残せる条件なども比べたいところです。
売値から、仲介手数料、必要な測量や片付け、解体などの費用、該当する税金を引き、借入れが残っていれば返済分も差し引く。査定額をそのまま、使えるお金として数えないことです。必要な費用と税金は、それぞれの家や相続の事情に合わせて確認します。
貸すなら、修繕費と空室も計算
月7万円なら、満室で年間84万円です。ただ、家を貸すには先に使うお金があり、貸してからも出ていくお金があります。
貸し出す前の修繕や清掃、荷物の片付け。貸したあとは固定資産税、保険、管理を任せるなら管理料。給湯器などの設備が故障すれば、その都度の費用も考えておきます。工事の見積もりは、すぐ必要なものと、数年内に必要になりそうなものを分けてもらうと比較しやすくなります。
月7万円でも、1年のうち3か月空室なら、その年の家賃収入は63万円です。これは空室を含めて考えるための計算例で、Bさんの家の実績ではありません。ここから税金や管理料、修繕費などが出ていきます。
最初の工事代を、毎年残るお金で何年かけて回収するか。その間に大きな修繕が重なっても、費用を用意できるか。満室の年だけでなく、空室や修繕のある年も含めて見ておきたいところです。
家の間取り、駐車スペース、立地に対して、どんな借り手を見込めるかも確認します。月7万円で貸したいという希望と、その条件で借りる人がいるかは別です。売却査定と一緒に、賃料と募集期間の見込み、貸すために必要な費用も聞いておくと、比較が具体的になります。
貸した実家は、必要なときに使える?
今は住まないけれど、定年後に戻るかもしれない。子どもが使う可能性は残したい。そういう予定があるなら、募集を始める前に伝えておく必要があります。
普通借家の契約では、貸主が戻りたくなった、売りたくなったという理由だけで、当然に退去してもらえるわけではありません。入居者がいる家を売ること自体は可能ですが、空き家を探す買い手に売る場合とは、相手も条件も変わります。
期間を定めて貸す定期借家という方法もあります。適法に契約し、必要な終了通知などを行えば、更新はなく期間満了で契約が終了します。続けて貸すには、双方の合意による再契約が必要です。契約書に年数を書けば済む話ではないので、募集時から手続きを確認します。
ただ、住める期間が限られる条件は、借りる人の探しやすさや家賃にも影響し得ます。「とりあえず貸して、都合が変わったら戻す」とは考えず、いつ、誰が使う可能性があるかを先に整理します。
迷う間の空き家管理は、任せられる
実家のことは、数字が分かったその日に結論を出せるとは限りません。家族と話す時間や、思い出の品を整理する時間が必要なこともあります。
その間、自分で帰省を続ける以外に、地元の会社へ管理を頼む方法もあります。外からの点検だけか、室内の換気や通水まで頼むか。庭の草木の手入れは含むのか。写真の報告や、台風などのあとの確認はどうするか。頼む範囲によって、費用も違います。
固定資産税、保険、管理費、帰省に使う交通費。持ち続ける1年にいくらかかるかを出しておくと、「もう少し考えたい」という時間にも見通しが立ちます。
賃貸にする場合も、入居者からの連絡や修繕の手配を管理会社へ任せることはできます。ただ、工事代を負担することや、どこまで直すかの判断は所有者に残ります。帰省を減らせることと、所有者の仕事がなくなることは、分けて考えます。
売る・貸すを決める、3つの判断材料
一つ目は、その家をこれから使う予定です。誰が、いつ頃、何のために使うのか。「いつか使うかも」のままなら、家族にも一度、具体的に聞いてみます。Bさんは、ご自身や親族が住む予定はありませんでした。
二つ目は、お金の使い方です。まとまった資金を今必要としているのか、修繕費を用意しながら家賃収入を得たいのか。売却後の手取りと、貸した場合に残るお金を比べます。家賃を何年分足せば売値になるか、という計算だけでは、修繕や空室、その後の売却条件が抜けてしまいます。
三つ目は、管理にどこまで関われるかです。自分で帰省する、空き家管理を頼む、貸家の管理を頼む。それぞれの費用と、自分に残る判断や手間を確認します。
この3つが分かれば、家を残したいのか、貸して所有を続けたいのか、管理から離れたいのかが、少しずつ具体的になります。それでも迷うなら、管理を整えて、家族と話す時期や見直す時期を決めておく。いきなり売却か賃貸かの二択にしなくても、進められることはあります。
Bさんは、管理の負担を考えて売却へ
Bさんの場合は、年に数回の帰省が負担になっていたこと、ご自身や親族が住む予定はなかったことを踏まえ、売却する方針になりました。
月7万円の家賃が見込めても、貸家の所有者として管理や修繕を続けることになります。Bさんにとっては、その先も春日井の家を持ち続けるかどうかが、家賃の額と同じくらい大きな話でした。
実家を残すことと、東京での今の暮らし。その両方を並べて考えた相談です。同じ条件の家でも、帰って住む予定がある方や、貸家として持ち続けたい方なら、進め方は違ってきます。
売ると決める前でも、家を見てもらい、売却・賃貸・管理、それぞれの費用と見込みを出すことはできます。思い出のある家をどうするか。まずそこまで具体的にしてから、家族と話してみるのも一つの進め方です。
春日井シティ不動産株式会社 代表取締役 山本直嗣
※実際の相談事例に、売却・賃貸・管理の判断材料を加えて再編集しています。築年数・査定額・賃料は相談当時のものです。査定額・賃料は見込みで、実績ではありません。イラストは相談者のイメージです。
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