【アパートを売りたい】古いアパートを相続したが修繕費や税金が高い
相続した築40年のアパートを売却したい
春日井でも街を歩いてると古いアパートをみかけます。昭和40年~50年代によく建てられた木造2階建で戸数が4戸~8戸くらいの規模のもの。
先日、そういう老朽化した古アパートを相続されたオーナーTさんから売却の相談を受けました。
築40年超の古アパートだがいま売るならいくらで売れる?と。まだ入居者もいるしお金にも困ってないけど、建て替えも含め、将来どうするのが一番いいか、アドバイスが欲しいとのことでした。
- 最寄り駅はJR春日井駅で2km圏内の立地
- 建物は昭和49年築の木造2階建、2DKが4戸
- 築後47年経過。土地の広さは50坪ほど
- 現在、2戸賃貸中、2戸は空室
- 賃料収入は2戸あわせて月額8万円(年額96万円)
- 固定資産税は年間10万円ほど
- 建物は老朽化しておりメンテナンスはあまりしてない
- 借金はなし
そこで今回は老朽化したアパートの売却方法について説明したいと思います。
Tさんがアパートの所有をやめて売却したい理由
所有するのにお金がかかりすぎる
いまのところ2件分の賃料収入が年間100万近くある。しかし最近でも給湯器が壊れたり、伸び過ぎた樹木の伐採などで維持修繕の費用がかかった。
近い将来、いままでやってこなかった屋根やベランダの防水や外壁の塗替などの大規模修繕工事もしないといけないかもしれない。
空いている2戸に新しく入居者を入れるにしてもお部屋のリフォームをしなければならない。先行投資しても入居者が入るかどうか資金を回収できるかわからない。
収益があっても修繕の費用対効果を考えると、積極的に貸したいという気持ちにはならない。
将来的な空室リスクを考えると建替えもしたくない
2000万とか3000万かけて建替えしたとする。新築時の表面利回りでもせいぜい3~5%程度。
新築後5年や10年は入居者にも困らないと思うが、将来的な20年、30年先以降の賃料相場の低下や空室リスク、定期的な修繕コストを思うとアパートを建替えても収益性は低い。
基本的に建替えの場合は、親子2世代3世代にわたった長期的な堅めの資産活用だからアパート一棟で儲けたいとか短期中期で利益を求める人には向かない選択。
アパートの売却査定の仕方
Tさんとしては、売り急ぐつもりはないが、金額によっては売却したいと考えています。
ちなみにアパートの売却というのは、一般的な家や土地を売却する場合と比べると売買価格の決め方がちょっと違います。
いくらで売れるのでしょうか?アパートの査定の仕方について説明してみましょう。
アパートの査定方法は「収益還元法」か「事例比較・積算法」
賃貸アパートや賃貸マンションなどの収益物件は、主に「収益還元法」と「取引事例比較法・積算法」という方法によって査定価格を算出することができます。
「賃料収入」をベースにした「収益還元法」
「収益還元」というのは、賃料収入をベースにした査定方法で、例えば年間で200万円の賃料収入があるアパートの場合、利回り10%だと2000万円の評価、利回り5%だと1000万円の評価ということになります。物件の種類や立地や築年数や構造によって利回りの相場は変わります。
「近隣取引事例と土地の価値」をベースにした「事例比較・積算法」
「取引事例・積算」の場合は、近隣での取引事例を参考にしたり土地と建物そのものの価値を算出しますが、住居や土地など一般的な不動産の査定方法はこの積算の考え方です。Tさんのアパートの場合は、建物は築47年経過しており価値はゼロ、土地相場は坪40~45万なので総額2000万~2250万くらい。アパートの解体費用分200~300万はマイナス評価として、おおよそ2000万くらいということになります。
収益還元法か?取引事例・積算か?どう選ぶの?
収益還元か?取引事例か?は別にどちらを選んでも構いません。最終的にその価格に売主と買主が合意するならば価格の決め方なんでもOK。
ただ、古いアパートの場合は賃料が安い分、利回りベースの収益還元法だと評価は安くなりがちです。Tさんのアパートも収益還元だと売主としては厳しい評価になってしまいます。
Tさんのアパートは現状で年間賃料は96万円。収益還元で利回り10%で計算すると960万の評価となってしまいます。売主としては安すぎると怒りの気持ちも湧きますが、古いアパートだと買主は最低でも利回り10%は求めます。
しかし単純に土地相場の取引事例をベースに積算評価でいけば2000万円は見込めます。(土地相場が坪40万円だから広さ50坪で2000万円。)当然ですが、売主としては高く売れる方を選びたい。
それで買い手がつくかどうかは別にして、収益還元と積算では評価が大きく違うケースも出てくることがわかると思います。
評価の方法はさておき、不動産の売買価格というのは需要と供給のバランスで決まります。買いたい人が多ければ多いほどその不動産の価格は高くなる。逆に買いたい人が少なければ少ないほど価格は安いなります。これは土地でも戸建てでもアパートでも同じです。
アパートを売るための基礎知識
評価の方法によって価格差があることは説明しました。売主としては売りたい価格で買ってくれる買い手を見つければいい。そのためにアパートの売り方にも工夫が必要です。ここでは、少しでも高く売るために、売主として知っておいてほしいことをお伝えします。
オーナーチェンジとして売ろうとすると安くなる
Tさんの木造アパートは築47年超で経年劣化もあり修繕費用負担や空室リスクを考えると、いまは賃料収入があったとしても高い収益性は期待できません。もともと当社のある春日井市の地域性としても収益物件を買いたいというニーズは少ないのが現状です。
老朽化したアパートとして売ろうとするなら想定家賃収入に対して少なくとも利回り20%位はないと買い手はなかなかいないでしょう。利回り20%というと年間200万の賃料収入が入るアパートなら売値が1000万円となります。
入居者退去で空き家にして売ると土地相場で売れる
もし、Tさんが入居者を退去させて売却しようとするなら、オーナーチェンジで売るよりはるかに買い手は見つけやすくなります。収益物件としてではなく、その土地に住宅を建てたいというニーズが多いからです。
Tさんのアパートは現時点で入居者が2戸ありますが、その人達を立ち退きさせることができれば土地として売却することが可能となります。建物を解体すれば土地相場で買い手はすぐ見つかるでしょう。土地相場が坪40万で広さ50坪なら2000万円です。
オーナーチェンジで売ると安くなる理由
春日井においては、家を建てるために土地が欲しいという一般の買い手はたくさんいますが、収益物件として入居者付きでアパートをそのまま売ろうと思うと、買い手は収益不動産オーナー、あるいは買取転売業者に限られます。
しかも木造アパートの耐用年数の限度もあり将来的な収益性の見込みが低いので、不動産投資家としてはよほど利回りが高くないと買いません。さらに古い建物は修繕コストなどを割り引いたら、どうしても土地相場を大きく下回る価格になります。
買取業者への売却はオーナーチェンジより安い
広告宣伝で目にするような買取業者にアパートを売ろうとするとオーナーチェンジで売るより安いので注意してください。築年数の古いアパートだと、土地相場が坪40万のところでも、業者の買取金額はよくて土地相場の5~6割でしょうか。
業者は収益アパートを持ち続けるわけではなく、将来的には入居者をすべて立ち退きさせて、建物を解体してから、土地の転売で利益を出す商売です。利益を出すためには安値じゃないと買取できません。
古いアパートを高く売るための方法
Tさんのアパートの場合、賃貸中の現状のままオーナーチェンジで売ろうと思うと、買い手の需要が少ないので、安くならざるを得ません。
全室退去させることができれば土地相場でオーナーチェンジよりも高く売ることができます。土地相場で売るための一番のポイントは賃借人がいないこと。
高く売ることを優先するなら、急ぎの売却でないかぎり、数年がかりで立退き交渉も視野に入れて将来の売却を検討するべきです。
立退き交渉について
立ち退き交渉は不動産取引の現場ではよくおこなわれていることですが、入居者が立退きに合意してくれるまでそれなりに時間がかかります。賃借人の状況によっては引越し先の世話や立退料の支払いも必要です。
入居者に拒否されればどうしようもない場合もありますが、信頼できる不動産業者の力を借りながら粘り強く誠意をもって話を続けるしかありません。
最悪、立退きがうまくいかなければ価格は安くなりますがオーナーチェンジで売ることはもちろん可能ですが、将来の売却を考えるなら、新規の入居者は受け入れない、もしくは定期借家契約にするなど、アパート売却を踏まえたアパート管理をしましょう。
古いアパート売るならオーナーチェンジより空き家の方が高く売れる
Tさんは結局、現在の2件の賃借人が退去したら売却を検討しようという方向性になりました。現時点では立退き交渉もせずに、大規模修繕も行わず、最低限の管理コストで維持していくとのこと。
アパートを少しでも高く売るためには工夫がいります。そもそも築40年を超えるような老朽化した木造アパートは買い叩かれやすいのです。相続などで急いで売りたい場合はなおさらです。
「入居者がいるままオーナチェンジで売却するか?」「立退きして空き家にした状態で売却するか?」によって、売れる金額が大きく違います。
きちんと自分のアパートの現状を理解して売却するために必要なことを準備しておけば、急な相続や売却のタイミングがきても心配ありません。
売らなかったとしても、賃貸収入の安定や継続のためアパート修繕や入居率改善などアパートオーナーとして対策をとることはいくらでもありますから、いずれにしても早め早めに手を売っておくことが大事です。