【取引実績37】借地上の建物賃貸借 名古屋市 月額18万収益化
当社は春日井エリアを中心に売買と賃貸管理をおこなっています。今回は2017年の事例ですが空き家を大幅に収益アップさせたケースを紹介します。
少し特殊な事例ですが名古屋のとある借地上の空き家(倉庫付き)について所有者から相談を受けました。
30年前に名古屋で土地を借りて、マイホームを建て家族で住んでいた。しかし、1年前に新居を購入、転居した。この空き家になった建物を売却したいと思い、ほかの不動産屋に売却を頼んでいるが、1年以上売れずに困っている。いまも空き家のまま、借地料を月額7万円、払い続けている。なんとかできないか?
売れずに困っていた空家が、年間200万円の高収益の賃貸物件になった
今回のケースは借りてる土地に自分が建てた建物が空き家の問題。借地権整理の話でもありますが、借地権は関係ない人でも、空き家でお困りの方に参考になります。わかりやすく空き家の収益改善の話をしたいので、借地権の話は深くは掘り下げませんが相談者の状況を整理してみます。
- 30年前に、名古屋市内に住居(倉庫付き)を建てた。
- 土地は借地なので、地主に借地料を30年間払い続けている。
- 建物の固定資産税も払い続けている。
- 1年前に新居を購入し、家族揃って転居。
- 借地権が成立しており、借地権付き建物として権利売買が可能。
- 空き家となった住居を売って現金化したい。
- 地主は、建物買取は拒否するが、第三者への建物売却は承諾OK。
- ほかの不動産屋に売却を頼んだが、1年以上、買い手が見つからない。
- 建物を所有し続ける限り、借地料を払い続けなければならない。
- 最悪、建物売却を諦め、借地権の権利を放棄し、解体更地にして土地返却も検討している。
1.悩みは、家を売りたいけど売れない、金銭的負担が厳しい・・・
もともとこのお客様の悩みは、ほかの不動産屋に依頼しているけど、1年以上も家(借地権上の空き家)が売れずに困っているということでした。ちなみにこの建物は1階が30坪の倉庫、2階が4LDKの住居という倉庫付き住居という珍しいタイプ。築30年ですが建物の程度良好で十分使用できる状態。それで希望売却価格300万円。いっけんすごく安いのに売れない。借地料の支払いだけ続いてしんどい状況でした。
2.借地上の建物の問題点とは?
いわゆる普通の空き家であれば、名古屋や春日井であれば価格の程度はありますが、1年も買い手がつかないということはないでしょう。空き家が使えなくても土地だけでも売れます。ただ、この空き家の最大のネックは借地上の建物ということ。土地は他人のものなので、勝手に売れない。名古屋で立地もそこそこ良いし、築30年の倉庫も付いた4LDK住居が300万というと一見安い。
しかーし、あくまで借地上の建物なので、安く買っても、月額7万円の借地料を払い続けないといけない。さらに、未来永劫、土地は自分のものにはならない。さらにさらに、築30年の建物のこれからの修繕も増えそうだ。となると、300万円どころか、100万円でも、一般の買い手が購入に二の足を踏むのは当然といえば当然です。売れる可能性がゼロとは言わないが1年以上も売れない理由はそこにありました。
3.借地上の建物の売却は、そもそもむずかしい
とはいえ「借地上の空き家だから売れません。」「地主が買取してくれなければどうにもなりません」と当たり前のことしか言えないようでは収益改善のプロとして話になりません。しかし、状況を把握すればするほど、現実的に第三者への売却というのは、厳しいと判断せざるをえません。
ご相談者としては、このまま売れない場合、借地権を継続したいなら空き家のままでも、借地料を支払い続ける必要がある。借地権を放棄すれば借地料の負担はなくなりますが、土地明け渡すのに建物を解体しなれければならない。解体費用は少なくとも200~300万はかかるでしょう。
どちらにしても、空き家が売れない限りは、それなりの金銭的な負担を覚悟しないといけない。
そのような状況で、あらためて市場予測をたて借地権の法的要件や利害調整など検討した結果、以下の提案をすることにしました。
お客様への提案内容
- 賃貸の需要もありそう。
- 立地的に貸倉庫の需要は強くある。
- 売却も不可能ではないがやはり現実的ではない。
- 再度、地主に借地権買取の交渉をしてみる。
- 最悪、借地解約の場合、地主への建物無償譲渡の可能性はないか。
- 地主さんが転貸承諾OKなら、貸せばいい。
1.売れないなら貸せばいいじゃないか!
この空き家、売るのはやはり難しい。
しかし賃貸であれば、借り手の需要がありそうだ。ということに気づきました。空家を「貸す」ということなら、地主の承諾はいりますが借地上の建物という売買で苦労したデメリットは関係なくなります。立地上、貸倉庫のニーズが高い地域なので、この物件の30坪の倉庫付きという特徴が優良貸物件の仲間入りの可能性を感じました。
普通の住居なら賃料相場で月額10万円もいかないところですが、貸倉庫の賃料相場で見ると安くても月額15万はいけるだろうと。
2.賃料月額18万円で募集開始したら・・・
その後、地主さんに空き家を貸すことの承諾をいただくことができ、募集家賃としては月額18万円で借り手を探す方向に全力で舵を切りました。早速、弊社でネット広告をさせていただいたところ、読みの通り、ネット掲載後、1週間で印刷会社、建材商社、体操教室の方からの問合わせが3組入り、速攻で申込みとなりました。
結果は年間200万を超える賃料収入を確保
1年間ただ借地料と固定資産税あわせて毎年90万円以上払うだけだった収益ゼロの赤字の空き家が、「月額18万、年間216万円」の家賃収入を得られる優良な賃貸物件に生まれ変わりました。
相談のあった6月の時点では、最悪、自費で建物解体で土地の明け渡しも覚悟した相談者ですが、7月末には借り手が見つかり、借地料を差し引いても年間120万以上の利益を確保できています。もし、いまの借り手が退去しても、すぐに次の借り手も見つかるでしょう。
正しい現状認識と需要予測と交渉技術で収益アップ
当初、地主としては、この空き家に価値がないと思っていたので買取を拒否しました。むしろ、解体して更地にして土地を返してほしいとさえ思ってました。でももし300万円で買いとっていたら?わずらわしい借地権は解消できて土地は完全に自分のものとなり、月額18万円の賃料収入はすべて収益にできたわけです。たらればですが、300万円以上の価値は間違いなくありました。
逆にお客様にとっては、価値がないと思われていた空き家で年間200万円以上の賃料収入を得られるという実績ができた。つまり、借地権付き建物としての価値を上げたので将来的な売却の可能性も出てきました。
借地権だけじゃなく、売買でも賃貸でも目の前の不動産取引の裏にはいろいろな利害関係が絡み本当はシンプルな問題の解決を複雑にしていることが多くあります。複数の人間の利害関係がからむので、正論だけで不動産取引が上手くいくわけじゃないところが面白くもあり不動産屋としての実力が問われるところです。。
今回は借地権がからんだ複雑な案件でしたが、お客様が地主さんとの良い関係を築いていたことも幸いしました。物件の賃貸需要の予想がドンピシャではまったこともあって結果としては大成功。お客様に大変に喜んでいただきました。