【実績2】地主と借地人共同で第三者に底地売却した借地権整理
【借地権整理】地主と借地人共同で土地売却した事例
お客様Tさんから高蔵寺町にあるご実家の売却相談をうけました。
ご実家は、借地上に建てられた築50年超の木造住宅。建物そのものには価値がないですが、借地権が成立しているため、借地権付建物としての価値をどう見込むか。もう少し状況を整理します。
Tさんが相続した実家の当時の状況
- 築50年の実家を相続した。
- 従兄弟が居住中。賃料3万円受取る。
- 土地は借地。叔母が所有者。借地料月2万円支払う。
- 借地権が成立してる。
- 売れるなら売りたい。
Tさんとしては、相続した実家を売れるなら売ってお金にしたい。ただ借地権整理の案件のため、通常の家を売るのとは状況が違います。
できるかどうかはさておき、借地権を整理する方法論としては、下記の4つしかありません。
- 借地権を地主である叔母に売るか?
- 借地権を第三者に売るか?
- 底地を叔母から買い取るか?
- 叔母とTさんが共同で第三者に底地売却するか?
Tさんと協議の上、借地権整理の方法としては、「借地権の地主買取」もしくは「地主と共同での土地売却」、この2つのパターンを軸に地主と話をしてみることになったのですが、最終的には、地主(叔母)と借地人(Tさん)と共同で土地を売却して借地権整理ができた成功事例となりました。
どのように借地権整理が進んでいったか時系列でもう少し詳しく説明します。
借地権整理の交渉前に確認したいポイント
1.地主(叔母)は話に応じてくれるか?
借地権整理においてとにもかくにも地主に拒否されたら厳しい。先祖代々の大事な土地を借地人に安い借地料で乗っ取られているいう否定的な感情をもつ地主さんも少なくない。しかし冷静に考えれば借地権整理ができれば地主にとっても得する話。その前提を理解していただいて話ができれば借地権整理の交渉がまとまる可能性は広がります。
2.建物の賃借人(従兄弟)の立退きができるか?
借地上の建物には、普通は借地人つまり自分自身や家族が住んでいることが多い。しかし、Tさんのケースは従兄弟が住んでいる。これがやっかいです。地主が買取ってくれるならまだしも地主と共同での土地売却をしようとなった場合、賃借人(従兄弟)付きで第三者への売却は条件的にはかなり厳しい。立ち退きを拒否されると、暗礁に乗り上げる可能性が高い。
3.共同売却の場合、土地が売れる見込みはあるか?
この土地は春日井の中でも比較的人気のある立地。一般の住宅用地としての需要は十分見込めます。売却そのものに問題はありません。ただし、売却代金をどう分けるかで揉める可能性があるので要注意です。
Tさんの借地権整理が解決するまでの流れ
Tさんから借地権整理の相談を受けたのは、平成28年。
地主である叔母さまに話をしにいくと、いずれ自分もこの土地の整理をしないといけないと思っていたらしく、条件によっては借地権整理を検討してもいいという。しかも、自分が買取るのではなく、共同で土地を売却して、甥のTさんと借地権割合50%で分けてもよいという。
普通は借地権割合の通りにOKしてくれる地主さんはいないので、Tさんにとっては、予想以上の好条件で借地権整理ができる可能性が出てきました。
第三者に共同で売却しようとするなら、実家に住んでいる従兄弟の立退きが必須。しかし、従兄弟は立退を拒否します。でもこのままじゃ売れないので、いろいろと説得を試みるも、今すぐの立退きはむずかしいと。
これは居住者の権利なので仕方ありません。立ち退き交渉を保留にし、継続的に従兄弟との協議を重ねていくことに。
そこから2年半後に転機が訪れます。
従兄弟が転職することを決めたとの報告を受けます。実家から職場の距離が遠くなるので、通えなくはないが、条件によっては立退きも考えるとのこと。これはチャンスなので、Tさんと協議の上、従兄弟にそれなりの立退き料を支払うことを条件に3カ月後に引越ししてもらうことで合意しました。
これで今回の借地権整理の最大のネックが解消されました。
それから土地売却にむけて動き出します。場所もよく、地形や大きさも住宅地に最適でしたので、予想通り買い手はすぐに見つかりました。土地の売買契約をし、従兄弟が引越し、建物を解体し、測量をし、土地の決済をしました。
売却代金をあらかじめ決めた通り地主の叔母とTさんでわけ、Tさんの借地権の整理が完了しました。
地主である叔母との良好な関係がベースにあってこその成功事例
今回の借地権整理が上手くいった要因しては、親の代から親戚関係が良好で叔母さんとも仲がよく巷でありがちな「地主 VS 借地人」という条件反射的な対立感情はなかったことが大きい。
正直にいうと私がご依頼を受ける借地権整理の成功率は50%です。2つに1つしか成功しません。相続がきっかけとなることが多いですが、地主さんから頼まれることもあるし、借地人から頼まれることもあります。
どれだけ双方にとっていい話であってもどれだけ誠意をもって頑張ってもダメなときはダメです。力不足で情けない限りですが相手にもされず門前払いでなにもできずに依頼者にお詫びすることが2回に1回あります。
それでもきちんと整理できた場合は希望の条件に満たない場合でも地主さんにも借地人にも非常に喜ばれます。
今回のTさんのケースは時間こそ長くかかりましたが、地主と借地人で感情的な対立なく交渉の土俵にのれたので、居住者の立退きだけできれば、いずれ借地権の整理は上手くいくという案件でした。
結果として、地主の叔母さんや借地人であるTさんも将来の懸念材料であった土地問題が解決して喜んでいただきました。従兄弟にも立退き料に感謝され、土地の買い手となった若いファミリーも希望の立地で念願のマイホームを建て感謝され、関係者みんなが最終的にWIN-WINとなれた良い事例でした。
ご依頼いただきありがとうございました。