【市街化調整区域の中古住宅】再建築できないケースがあるので要注意!
もし自分の家が法令上、建て替えできないことが判明したら
春日井市内の「市街化調整区域」にある築35年の中古戸建の売却査定の依頼。
Aさんは、25年ほど前に当時で築10年の中古住宅としてこの物件を購入。ここ数年はひとりでお住まいで家が広すぎて掃除が面倒に。また郊外立地で交通の便もよくないので、駅近の利便性のいい中古マンションに住み替えたいとのこと。建物は築35年で古いがリフォームすればまだ住める。土地も広く駐車場や庭のスペースも充分すぎる。立地が悪くて不便なのが難点だが、田舎風の郊外立地を求むお客様もいる。それなりに買い手も探せるだろうと査定にとりかかります。ところが、役所での調査で、資産価値に大きく影響を及ぼす事実が発覚。
なんと、Aさんの家の建て替えができない可能性が高いことが判明。元々「市街化調整区域」と呼ばれる区域では、特別な許可要件を満たさない限り、原則として建物の建築はできないが、Aさんの家は既に建築されているのでなんらかの建築許可の要件を満たしているはず。にもかかわらず、再建築ができないのはなぜか?将来の建て替えはできないとなれば、Aさんの不動産の価値が大きく損なわれ、希望価格では売るのがむずかしくなってしまいます。
「市街化調整区域」と「市街化区域」の違いについて
「市街化調整区域」の土地は、原則、建築できない。
一定規模以上の市町村においては、民間の乱開発による無秩序な市街化を防止するために、市街地として積極的に整備する区域と市街化を抑制する区域とに区分し、計画的な街づくりが行われています。「市街化調整区域」というのは、その名の通り、市街化を抑制する地域です。原則として、建物を建築することができません。例外として、特別な要件を満たし許可を得ることにより建物の建築が認められる場合があります。
「市街化区域」の土地なら普通に建築が可能。
「市街化区域」というのは、優先的に市街化を促進する地域です。調整区域とは逆で、建築基準法上の制限はありますが、ごくごく普通に建物の建築が可能な区域となります。春日井市内でも住宅地や商業地域の多くは市街化区域内です。
市街化調整区域でも建築できる場合
市街化調整区域は原則として建物建築はできませんが、都市計画法における特別な要件を満たす場合に限り、建物の建築が許可される場合もあります。
一例ですが、住宅であれば農家の分家住宅や昭和45年以前から宅地であった既存宅地、事業所であれば老人ホームなどの社会福祉施設や幹線道路沿線の流通施設など、要件は細かく多岐にわたります。いわゆる開発審査会基準を満たし、かつ許可を得られた場合に限り、建築が認められることになります。
なぜ、Aさんの家が建て替えできないのか?
Aさんの家も、建築時に特別な許可を得て、例外的に建築が認められ建物ではあったのですが、じつはAさんの前の所有者が「住宅」ではなく「店舗」として許可をとっていて、その後、「店舗」を「住宅」に転用改築した状態でAさんが購入したことが判明。
「市街化区域」の土地ならば、基本的には住宅でも事務所でも店舗でも建てられるし、増改築も建替えも自由にできるわけですが、「市街化調整区域」の土地は、新築時だけじゃなく、将来、増改築したり用途変更をしたりするにもその都度その要件にあった特別な許可を得ないといけないのです。
さらに建替えができるとしても、同一用途同一規模という原則があるので、店舗を住宅に転用することはそもそも認められません。それくらい市街化調整区域の土地は建築制限が厳しいのです。Aさんの家は、本来は店舗で使用されるべき建物を、無許可で住宅に転用して使用している状態。そもそも住宅が建てられる要件がなかった土地だったというわけです。前所有者がしたことでAさんは知らなかったとしても、今後も住宅は建てられないという事実が変わることはありません。
建替えできないと何が困るのか?
売却の際に、無許可で住宅に転用してたことや、住宅の建て替えができないことは、大きなマイナス要因になります。現状の建物を使用することは可能とは言え、建替えは不可ということですから、普通に建築ができる土地に比べれば、著しく土地の価値は下がってしまうこととなります。
市街化調整区域でも許可によって住宅が建築ができる土地ならば、それなりの金額で売ることは可能ですが、Aさんの土地の場合は、住宅建築ができない分、買い手が限られてしまう。将来建替えできなくてもいい、いまの建物が老朽化で朽ちるまで住めればいい、という人がいれば売れるかもしれませんが、おそらく住宅ローンを組むのが銀行の物件評価的にむずかしいこともあるので、相当安くないと買い手は見つからないでしょう。
市街化区域と調整区域の土地の価格差は?
ざっくりですが、春日井の土地相場で言うと、「市街化区域」の住宅向けの土地の場合、坪30万~50万くらい。「市街化調整区域」の土地の場合は、坪数万~坪30万くらい。市街化区域の場合は、基本的に建築に支障はないですが、立地によって価格差がでます。市街化調整区域の土地の場合は、建築ができる土地かできない土地かで大きく価格が変わります。ほぼ値段がつかない何も建てられない農地もあれば、坪30万くらいの住宅や事業用建物が建てられる既存宅地と呼ばれるような土地もあります。
まとめ
このAさんのケースは、住宅としてまだしばらくは住むことはできるし、将来住宅の建て替えはできないものの、更地にしたまま駐車場や資材置場として使うことはできるし、売れないわけではない。でも結局、マンションに買い換えられる金額での売却はむずかしいので、とりあえず売るのはやめてそのまま住み続ける結果となりました。
たまに、「郊外の○○ですごく安い土地があって購入を検討したいけど、どう思う?」なんて聞かれることがあります。そういう場合は、だいたい建築不可の調整区域の土地です。土地に、建物が建つか?建たないか?というのは、その土地の価値に極めて大きな影響があります。繰り返しますが、市街化調整区域の土地は、原則建物不可です。既存宅地等の特別要件があって許可が取れる場合のみ建築ができます。
しかし、建築要件の有無の判断がビミョーに難しいケースも多く、建築できると思っていたら結局、建築許可が下りずたてられない土地だったということもあるし、既に建物が建っていても、今回のお客様のように再建築できない場合もあります。不動産業者も調整区域の土地はかなり慎重に取り扱います。住宅建築のために調整区域の土地を買う場合は、そのあたり慎重にご確認されてください。