借地権

【実績39】借地権の売却 名古屋市中村区 借地権整理 地主買取

山本 直嗣

空き家になった実家を売りたい。土地は借地だが借地権として売れるか?

当社は春日井エリアを中心に売買と賃貸管理をおこなっていますが、今回は名古屋市で取引した借地権整理の事例を紹介します。

お母様が亡くなり空き家となった借地上の実家を売りたいというAさんからの相談です。

Aさんは建物の所有者。土地は地主Kさんが所有者。Aさんは土地を借りてる側ですが、「借地権」という権利の元、賃料を支払い自己の建物を使用し続ける続けるかぎり、ほぼ永続的に土地使用を許される立場です。さらに「借地権」というのは、相続資産の対象ともなり売買も可能です。

でも実際に借地権を売るというのは、なかなか一筋縄ではいかず、簡単ではありません。

借地人から借地権整理の相談

典型的な借地権整理の事例ですが、相談者Aさんの状況を整理してみます。

借地権付き建物を売りたい

昭和53年に父親が知り合いから土地を借りて、マイホームを建て家族で住んでいた。平成20年に父が他界し、建物は母名義となり、土地は借地のまま変わらず暮らしていた。1年前に母が他界し、ご相談者のAさんが建物を相続したが、自分は別に居住地があるため空き家のまま借地料のみ支払い続けている。築40年以上の古い建物に価値はないのは理解しているが、借地権は売れると聞いたが本当か?

  • 昭和53年に、Aさんの父親がマイホームを建てた。
  • 土地は70坪の借地。地主Kさんに借地料を払い続けている。
  • 借地料は昔のまま、現在の相場よりかなり安い。
  • 相続によりAさんが1年前に借地人となった。
  • Aさんは別に自宅があり、実家は空き家になっている。
  • 借地契約は期間20年で締結。更新後の契約書はなし。
  • 地主も相続で代替わりして面識なく、人間関係はほぼない。
  • Aさんの意向として、借地権として売れるなら売りたい。
  • 希望の金額は得になく、相手の要望にも耳を傾ける気がある。

借地権を売るのがむずかしい理由

地主が素直に借地権を買い取ってくれるなら話は早いのですが、一般的に、買取を拒否したり、買取るにしても価格が厳しく条件が折り合わないことはよくあります。

地主の立場としては所有権を完全に取り戻せる絶好のチャンスなのですが、先祖代々の土地を他人に安い賃料で奪われてると、長年のうらみつらみがあることも。そこで代がかわって関係もそこそこで、いきなり買い取ってとなれば、ずうずうしいと怒りの気持ちを露わにする人もいます。借地人としては正当な権利ですが、互いの人情としては仕方ありません。

一切交渉に応じてくれない地主はどうしようもないですが、買取る条件によっては検討してくれるというなら借地権整理の可能性は高まります。

ちなみに、地主以外の第三者に売ることも可能ですが、わざわざ地方の借地権を買うという人は普通はいないので、第三者に売るというのもそれはそれで稀なケースです。

Aさんの借地権交渉はどうなった?

Aさんの依頼をうけて、早速、地主Kさんにアプローチをしたところ、Kさんも土地を返してほしいと思っていると。ただし、借地人のペースで交渉を進めるつもりはないので、条件交渉を含め、今後は弁護士を通じて話をするとのこと。

解決を前提に弁護士と話し合い

後日、地主側の弁護士事務所で打合せすることになり、Aさんに同行してついていくことに。

地主Kさんもできれば争わず解決したい意向であることを弁護士に確認し、金銭的な落としどころもある程度は摺合せしておきます。

あとは主として金銭的な条件が互いに納得いくかどうかです。

借地権の相場について。いくら希望していいのか?

結論からいうと、借地権の相場はありません。完全にケースバイケース。地主と借地人が合意すればいくらでもいい。

相続税評価のときにつかう借地権割合というのがありますが、借地権売買でその割合どおりにすることはまずないです。例えば、春日井の住宅地なら、借地権割合50%とされてる場所が多い。これだと相続税評価上は、借地権の価値は元の土地の半分になるが、もし売買でその金額を地主に要求したら、ほぼ交渉決裂するでしょう。

ぼくの経験上ですが、借地権整理をしたい側、交渉を持ちかける側が、立場は弱いのが普通なので、それなりに妥協しないとまとまる話もまとまらないと思います。

現実としてはこれまでの借地料や更新料や承諾料など地主への金銭の支払総額や契約の経緯や当人の状況や意向なども加味して合意できそうな条件を探ります。

地主Kさんの主張

Kさんの主張としては、本来であればAさんの方で建物の解体をして、土地を返してもらうものという認識だが、解体費用くらいはこちらで負担する用意があるというもの。

これまでの借地料が安かったのを根拠に、タダで貸してる使用貸借同様で、借地権の権利が成立してるかどうかは争う余地があるとの見方もあると。借地権を売りたいというAさんからすると、その根拠を根底から覆されかねない主張です。

とは言え、これは交渉なので、地主Kさんも最低限の金銭負担で土地を取り戻したいわけで、そのための主張です。AさんはAさんで自分の主張をすればいいのです。

借地人Aさんの主張

Aさんは借地権の権利を売りたいということなので、その価値は認めないよ、一切お金は払わないよと言われれば、争うしかありません。

でももし、Kさんが解体費用分をもつというなら、その金額で売ったという考えもできます。

じつはAさんとしては、最初から売れる金額にこだわりはなく、できれば解体費用分や家財の処理費用分をまかなえるくらいの金額で売れれば御の字という意向。

お金は欲しいけど、実家を早く整理してスッキリしたいというのが優先事項でした。

借地権交渉がまとまらないとどうなるか?

もし借地権交渉が決裂するとどうなるか?というと、そのまま地主と借地人の関係が継続するだけです。

借地人は家を使ってようがいまいが賃料を払い続ける。地主はそのまま安い賃料を受け取り続ける。固定資産税も払い続ける。賃料が安ければ値上げ交渉もできます。相続すれば相続人がその権利を継承します。

そのうち、地主から借地権を買取りたいとか底地を買ってほしいとなるかもしれないし、今回のAさんのように借地人から借地権を買ってほしいとか、底地を売って欲しいとなるかもしれません。

いつかどちらかから借地権の整理をもちかけるときがくるまで続きます。

当初の解体費用の2倍の金額で決着。

今回のAさんの借地権売買は、当初の解体費用のほぼ2倍の金額まで地主さんより支払っていただくことで最終的にまとまりました。

地主にとっても、借地権を取り戻す機会はそうそうないし、実際の売買相場を考えれば、上乗せしたとしても今回の金額で土地を取り戻せたことは非常にメリットは大きかったと思います。

Aさんには、やり方によってはもう少し高い金額でまとまった可能性もあったかもしれませんが、予想以上の金額でまとまったと喜んでいただきました。

実際に空き家でもあるので、交渉決裂して維持管理の手間や心労が続くことを思えば、お互いに納得して借地権整理がまとまったことは非常に良かったとおもいます。

借地権交渉においては地主と借地人の感情のもつれで条件交渉までいくのに時間がかかるものですが、今回は地主さんの意向で弁護士の先生に入っていただいたことが、結果としてスムーズに条件交渉ができて、話がまとまった要因となった思います。

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